地域の住民が末永く運営を続けるためには、収益を目的としないで、むしろ貨幣経済から離れた仕組みを考えた方が良いのではないか。そこで超高齢化、人口減少が急速に進む街の生活基盤を支えるために建物を利活用するという方針を軸にしたのです。地域には5km圏内に買い物ができる小売店がなく、高齢世帯には冬場の雪かき、庭木の剪定なども大きな課題となっていました。そこで、地域の有志と一緒になって考えたのが「かいことセンター」構想です。
かいこととは富山弁で交換を意味します。若い世代と高齢者が、お互いの労力と時間を交換し、困っていることを助け合う拠点として施設を利活用しようと考えたのです。さらに「かいことセンター」の発想を無理なく持続可能なものにするための事務局づくり、『特定地域づくり事業協同組合制度』などの国の施策の活用、近隣の運動公園利用客の利便性の充実させることでの収益の核づくりなど、具体的なプランに1つ1つ落としこんでいきました。結果的に地域の意見がまとまらず、実現には至りませんでしたが、小矢部に遺るメルヘン建築の利活用の一例を市に対して示せたことに意義があると思っています。また私たちJ-pmcにとっては、県外のシンクタンクが行うような構想づくりにとどまらず、実際に地域の声を聴き、運営、維持管理のあり方までを同時に提案できたことは、地域に根ざすCMとして価値を示せたと考えています。
既存の建物を利活用する上で大切なのは計画の永続性です。対象物件のもつポテンシャルと可能性を整理し、地域の人々の声を聴きながらプランニングしていくことが求められます。
プロジェクトの概要
- 幼稚園となる前は子供たちに教育を受けさせるために地域で土地を拠出した小学校でした。その思いを次世代に繋ぐためのお手伝いとプランニングを実施。
- 対象施設を地域で取得し、地域の新しい生活基盤として再活用する案を検討。
- 市に対して建物取得の協議を行うための資料を作成し、地域の想いの具現化を支援。